この小さなケースを見つけた時、最初何に使うのか考えた。ブリキに印刷された文字を読むと、どうやら巻いた糸を入れるものらしい。「オ・シノワ(Au Chinois)」と書いてある。「シノワ」って、「中国人」とか「中国の」という意味だ。中国と関係あるのかと、ちょっと調べてみた。
いやいや、「オ・シノワ」は、19世紀半ばにフランスで生まれた縫製糸のブランドで、糸巻きの製法が当時、画期的だったらしい。今では、綿やポリエステルの裁縫糸も製造しているみたいだが、このブランドの強みは、強力な撚りの麻糸にロウ引きをしたもの。馬具や鞄、靴など、主に革製品の縫製に重宝されている。高級ブランドのバッグなんかも、「オ・シノワ」で縫ってあることが多い。
何故「シノワ」? 昔、中国の縫製品というのは、とても洗練されているという評価だったらしい。それがブランド名のはじまり。ここの製品のラベルには、現在でも、飾り帽子を被って王朝時代の正装姿をした中国人と思しき人物が描かれている。

印刷の色合いがとてもヴィンテージなブリキのケースは、当時「オ・シノワ」糸の「おまけ」だったらしい。蓋には、ふたつ小さな穴が空いていて、そこから中に入れた糸巻きの糸を出す。ケースを使ってみると意外に便利。手縫いをしている最中に、うっかりボビンを落として、糸が延々とほどけていくという悔しい状況を防げる。
「オ・シノワ」糸は、日本でも購入できるみたい。
