今でもあるのかどうかは知らないが、私の母の時代(昭和ひと桁生まれ)には、しっかりと「嫁入り道具」があった。箪笥や鏡台(…なんて今どき言わないよね)などの家具、着物の喪服や訪問着から布団まで、嫁いでいく娘が新しい生活に困らないように家族が用意した。
フランスでも、かつては娘たちが嫁ぐ日に備えて、白いリネン(麻)の生地を使い自分で縫ったり刺繡をしたシーツやテーブルクロス、ナプキンなどを用意した…と義母が言っていた。こういったものには、たいていイニシャルが刺繡されていて、それは花婿と花嫁の苗字であるらしい。
写真は、義母の部屋にある箪笥の中で丁寧に畳まれていたナプキン。20枚くらいはあった。よく見ると、同じデザインなのに刺繡が素晴らしいものと、ちょっとしくじったのではと思えるものがあり面白い。何枚も作るうち、少しずつ腕を上げていったみたい。私が出来栄えナンバーワンに選んだのが右側の写真。まるで刺繡ミシンで作ったような細やかさ。いや、ミシンにはない美しさがある。
義母は、これらのナプキンを大切に保管し、実際にはあまり使っていなかった。私は、友人を食事に招いた時や、夫と二人でもご馳走の昼食で使ったりしている。すると、食卓に突如、高級感が漂う。

