日本の実家では、ご飯茶碗、お椀、湯呑茶碗、そして箸は、家族それぞれ自分のものを使っていた。父親の茶碗が一番大きく、次に母親、そして私、妹のはとても小さな茶碗だった。今でも帰国すれば、昔ずーっと使っていた「私の食器」で食事をする。
よその家庭はどうだかわからないが、義母の家では朝食のコーヒー茶碗は誰のものかが決まっていた。カップではなくて「茶碗」なのは、取っ手がなくて「どんぶり型」だからだ。
私のコーヒー茶碗は、写真の真ん中にある青や桃色で野花の束が描かれているもの。ほかの4つはお祖母さんの家で見つけた茶碗のいくつか。大きなえんじの花が描かれた茶碗は使いこまれていて、もしかするとお祖母さんの茶碗だったのかもしれない。裏を返すとうっすらと文字がある。「ディゴアン(Digoin)」「サルグミンヌ(Sarreguemines)」。サルグミンヌはドイツとの国境近くの町で、フランス革命(1789年)あたりに誕生した陶磁器産業で有名。ファイアンス(Faïence)焼きというらしい。その後、普仏戦争でドイツ(当時はプロイセン)に敗れ(1871年)、サルグミンヌ周辺の領土はドイツへ渡ったため、窯をディゴアンの町へ移した。陶器などの裏に2つの町名が書かれているのはそのためだ。2世紀以上にわたるサルグミンヌの陶器製造業は、倒産によって2007年に幕を閉じた。以上、私の簡単調べによる!
大きなどんぶり茶碗なので、私たちは温かいうどんやラーメンなんか食べる時にも利用している。

