プロフィール

エム。フランス在住。ブルターニュ地方の海辺沿いの町にある、夫が育った古い家を管理することになった。家の中を掃除し整理していくと、箪笥や押し入れの中から、屋根裏(Grenier)から、そして地下室(cave)から、ヴィンテージな品々がいっぱい。これらを日々の生活の中で活用したり、リフォームする楽しさを発見…。


義母は、30年以上も前に義父が亡くなって以来、この家でひとり暮らしをしていた。フランスの西部に位置するブルターニュから遠く離れたアルプス地方で暮らしていた夫と私が義母に会いに行くのは、毎年休暇がもらえる夏の3週間ほどだったので、長い間彼女はきっと寂しかったに違いない。でも、この期間、義母は若い頃から得意だった手芸の作品をせっせと仕上げ、シルク地に絵を描くことを新たに習得し、老人クラブのバスツアーに参加するなど、趣味を広げていった。

15年くらい前に義母は脳梗塞を患った。その手術後のリハビリで一時は随分回復したものの、数年前、自宅からあまり遠くない介護付き老人ホームに入居。2024年末、クリスマスの日の1週間前に亡くなった。あと、4ヵ月で100歳という大往生だった。

義母がいなくなり、誰も住まなくなった家をどうするか。とりあえずは、家の中を片付けよう。整理をはじめると、大きな木箱やスーツケースには丁寧に畳まれた古い衣服や生地が入っていたり、それまではほとんど行ったこともなかった屋根裏や地下室からは昔の家具や食器、玩具、古い雑誌、夫が赤ん坊の時に着ていた手製の服などが出てきたりした。「なんて、ヴィンテージな世界!」。そのほかにも、さまざまな道具や義母が若い時から作ってきたのだろう刺繡品や編み物…。ひとつひとつを手に取り眺めながら、義母が捨てることが大嫌いだったことを思い出した。

また、義母は亡くなる1年くらい前まで、近所にあった自分の母親(つまり、夫のお祖母さん)が暮らしていた一軒家をほとんど手つかずのまま所有していた。お祖母さんが亡くなってから約30年間も内装そのままに。この家は、最近夫が売却したのだが、家の中にあった物は知り合いにあげたり、廃棄したりせざるを得なかった。それでも、古くても気に入ったいくつかの家具や置物、お祖母さん手作りの手芸品などは、夫に「捨てれば…」と言われても取っておくことにした。

この先、もっと年を取れば、いずれは手放すだろう物たち。でも、それまでは生活の中でこれらを使っていきたいと思う。

このブログは、管理することになった古い家での発見を紹介しながら、義母の、そしてお祖母さんの思い出が詰まったヴィンテージな世界を伝えるものである。